進化史上人間に特徴的である長い思春期は、社会との交流を通じて自我機能を育む、極めて重要なライフステージであり、大脳皮質のなかで最後に前頭前野が成熟することと対応している。人間の精神機能の最大の特長は、進化過程で発達した前頭前野を活用して、高度な言語能力と社会性の上に自我機能を成立(自己像を形成)させ、自分自身の精神機能さらには脳機能を自己制御することである。
本領域は、人間における自己制御精神の成立、思春期における発達過程を個人・集団レベルで解明し、分子から社会までの統合的・学際的アプローチで思春期における自己制御精神の形成支援を目指す。このため、以下の研究項目について、「計画研究」により重点的に研究を推進するとともに、これらに関連する2年間の研究を公募する。1年間の研究は公募の対象としない。なお、研究分担者を置くことはできない。公募研究の採択目安件数は、単年度当たり(1年間)の応募額600万円を上限とする研究を6件程度、400万円を上限とする研究を12件程度予定している。
研究項目A01 では、思春期の精神機能の自己制御についての横断的疫学研究、進化心理学的・神経行動経済学的研究など、集団を対象とした研究を歓迎する。進化倫理学に関する研究も審査対象となりうる。
研究項目A02 では、精神機能の自己制御の基盤となる自己参照的な認知行動を、分子から集団に至る多様なレベルで、かつ、発達・系統発生・社会性など多様な評価軸で比較して、その生物学的基盤を解明する研究を歓迎する。また、自己参照的な認知行動の構成論的・モデル構成的研究も対象とする。
研究項目A03 では、精神機能の自己制御とその障害の分子から心理・社会までのアプローチによる形成・修復支援法の開発を目指した臨床研究を歓迎する。脳神経倫理学に関する研究も審査対象となりうる。
各研究項目とも、特に、従来、小児期・成人期の研究の狭間で扱われてこなかった思春期に特化した研究、従来の還元主義的な脳科学では扱えなかった再帰性・自己参照性を持つ自我・自己制御に焦点を当てた研究の提案を期待する。また,若手研究者の積極的な応募を奨励する。
【研究項目】 A01 思春期の自己制御の形成過程 A02 メタ認知と社会行動の発達にもとづく自己制御 A03 分子から社会までの統合的アプローチによる自己制御の形成・修復支援
申請方法等につきましては,文部科学省のウェブサイト (http://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/hojyo/boshu/1310451.htm)をご参照いただき,所属機関の研究費担当にお問い合わせください. 様式:S-1-21 http://www.mext.go.jp/component/amenu/science/detail/icsFiles/afieldfile/2011/09/01/1310384_18.doc
※「公募研究」とは、一人の研究者が、当該研究領域の研究をより一層推進するために「計画研究」と連携しつつ行う研究であり、当該研究領域の設定後に公募するものです。なお、公募研究には、研究分担者を置くことができません。また、研究期間が1年間の研究課題は審査に付されません。